第2回 美容院の話をしよう。 私が話したい美容院の「大軍」は長春市内の中心部に位置し、繁華街もたくさんある中で桂林路近辺は海外貿易雑貨の店があったり、CD・DVDのお店があったり、果物屋があったりで、学生達が自分たちのファッションに関するもの、生活に関するものを調達する比較的ファッションセンスの良いお店が集まった通りである。 特に美容院が軒並みあり、どこも良くはやっているように思う。 日本だと美容院と理容院の区別があるが、中国にはその区別がないようで、男女関係なく髪を切ってもらっている。 「大軍」のオーナーは李さんと言う。李さんとの付き合いは長くて、長春に行き始めた頃からだから、もう5年になるだろうか。最初は「大軍」の2階にスポーツマッサージをやっていると言うことで、長春に行くたびにこのマッサージをしてもらっていた。 行くたびに、日本のヘアースタイル雑誌などをお土産に持って行っていたのが印象を良くしていたのだと思う。その内に日本製のハサミを買ってきて欲しいと頼まれたりして、買って行ったこともあった。髪を切るハサミの価格が高いことにびっくりした記憶があるし、わざわざ日本製を買わなくても良いのにと思ったが、高くても良いものは良いらしい。毎日一番使うものだから、投資と自分の身体のためなのかもしれない。 先日は600万画素以上で3万円以内のデジカメを買ってきてと頼まれた。中国製で良いのがあるでしょうと思っていたが、中国で買うPanasonic・SONY・NIKON・CANONは偽物の可能性がある。日本で買うPanasonic・SONY・NIKON・CANONは中国製であっても本物だから本物を買いたい、という理論であった。恐ろしいほどの自己防衛策である。Panasonicを買って持って行ったが、中国販売価格とホボ同じだった。しかし、日本で売っている商品が絶対本物と言える情況はいつまでだろうか。 私が李さんに髪を切ってもらうようになったのは、1年くらい前からである。日本のご近所に行きつけの散髪屋さんがあったし、ご近所の手前、なかなか他所で散髪をすると言うことが出来なかったと言うのが、李さんに髪を切ってもらわなかった理由だ。律儀な性格が1年前に崩れたのは自分でも良くわからないが、出張前のごたごたで散髪にも行けず、ボサボサ頭でどうしようもなく、要人と合う為に情けない格好よりは、少しでもマシにと言う考えだったのだと思う。 カットだけのコースもあるし、洗頭と言って頭をシャンプーしながら、頭のマッサージをしてもらうコースもある。洗頭は実に気持ちがよい。大体1時間くらいかけて頭を中心にマッサージをしてもらってから、散髪である。気持ちよくなってふぬけ状態になっているから、カットは好きなようにしてという感じだが、李さんは実に丁寧にカットしてくれる。 この前髪を切ったときは、ブラッドピットのように短く、丸刈りに近い感じでお願いした。普通のハサミ、剥きバサミ、バリカンを使ってブラッドピットに仕上げるべく頑張ってくれる。気に入らないのは、頭の向きが悪いときに、指で頭の方向を変えるのが痛いのと、頭の位置を固定しろよと口で言わずに指でするところくらいか。 「大軍」は現在2店舗あり、別にファーストフードのお店も経営している。李さんの次の店は、高級志向のお店を考えているようだ。日本の技術を取り入れて付加価値を付けて、長春のお金持ち御用達を狙っているようだ。その為に李さんは日本に来たがっている。去年から彼の為に招聘状を作成してあげて、来日できる段取りを取っていても、日本政府がビザを発行しない。瀋陽の日本領事館職員の話によると、もっと日本の美容関係者と中国で交流をしないと、ビザの発給はしにくいと言われたようだ。 先日「大軍」のようすを写真に撮って、美容関係者に見てもらったことがある。そのコメントは「古くさい」であった。私が見てもわからないが、こんなやり方だと日本の若い娘達は来ないと言っていた。微妙にカットの仕方が違うそうである。日本の女の子は化粧も上手いし、髪の毛のカット等自分を綺麗に見せるのは上手な気がする。まぁー日本全体がそうなっているのだから、ごく当たり前のことかもしれない。 「大軍」が日本では古くさいと言っても、長春の外国人留学生とかは良く来るそうだ。日本人の髪は柔らかくて、手入れが行き届いていると言っていた。これは日本のシャンプー・リンスの質が良いからだと言っていた。 中国でどんどん無くなりつつあるものがストレートの黒髪だ。東洋人の黒髪の美しさを是非残して欲しい。ちょっと前まではこの髪型ばかりだったのに。 こんな事を言うと李さんの営業妨害になるからやめるが、中国の女の子がもっと綺麗になるためにも、李さんに頑張ってもらわなければいけない。 「大軍」の従業員は幹部をのぞいて、結構出入りが多いように思う。技術を学んでさっと辞めて、次の給料の高いところにステップアップするのだろうが、この辺の対策をどうしているのかと李さんに聞いてみたことがある。 「大軍」入社時に3年間辞めないという契約をし、その時に保証金を取ると言っていた。日本円でおよそ30万円位だったと覚えているが、これでは辞めたくても辞められないし、入社するにもお金がないと入れない。この保証金を払っても「大軍」に入社したいという人がいるのだから、人気のお店なのであろう。 李さんは言っています。日本人の美容関係者で中国の美容院に興味のある経営者の方はいませんか?もし、興味があって長春まで来ていただけるなら、宿泊費・滞在費は負担しますからと言っています。 どなたかいらっしゃいませんか? 2007年11月 Tweet